訂正:2017/5/17,2017/5/21


この記事には事実誤認がありましたのでタイトルを変更し、訂正を追記しました。大変申し訳ございません。



営業増収減益の不思議



史上最多の観客動員、クラフトビールのヒットに初のクライマックスシリーズ進出と幸先の良いスタートを切った買収後初のシーズンだが、ハマスタの利益は伸びなかった。



その結果、当連結会計年度の売上高は、球場部門は、プロ野球観客動員数の増加などにより、前年同期比67百万円増加し、販売部門も球場部門同様、プロ野球観客動員数の増加などにより、前年同期比241百万円増加、広告部門では前年同期比72百万円増加しましたが、その他部門につきましては前年同期比24百万円減少となりましたので、全体で4,319百万円、前年同期比356百万円9.0%増加となりました。
また、売上原価では販売部門の売上増加に伴う商品原価の増加、年間席飲食サービスによる業務委託費の増加などにより、3,522百万円、前年同期比380百万円、12.1%増加したことにより、営業利益は385百万円、前年同期比54百万円12.2%減少となり、

株式会社 横浜スタジアム 有価証券報告書 第40期(平成28年2月1日-平成29年1月31日),2017/4/28,有報速報




観客が増え当然販売など売上が伸びたにも関わらず、営業利益は減少した。販売商品原価と年間席飲食サービスによる業務委託費の増加を主な理由としているが、どういうことだろうか。経営一体化で相乗効果を出すはずが、逆に混乱を生じているのだろうか。それを示唆しているような記述も報告書にはある。




解散させた子会社が株主総会で異例の復活



また、横浜球場商事株式会社は平成28年12月14日をもって解散し、清算手続中であります。

≪略≫

(重要な後発事象)
 横浜球場商事株式会社については、平成29年4月10日開催の同社の株主総会において、会社の継続が決議されました。
同社は、昭和53年に酒類卸売業免許を取得し、主に当社及びテナント業者等に酒類を卸売販売してまいりました。同社の解散に際して、当社において酒類卸売業免許の取得を目指してまいりましたが、同社を継続し、引き続き当社及びテナント業者等への酒類の卸売販売を行うことが効率的であると判断いたしました。

株式会社 横浜スタジアム 有価証券報告書 第40期(平成28年2月1日-平成29年1月31日),2017/4/28,有報速報




場内で販売する酒類の卸売を担当していた横浜球場商事を一度解散したものの、株主総会で復活を決定した。親会社が過半数の議決権を持って、しかも社長が親会社の社長を兼任している会社で、経営陣の決定が覆されるというまさかの展開である。TOBに乗らなかった少数株主達の激しい追及が伺われる。

完全子会社を解散して事業を本体で継続するという一見中立な案件で、経営陣と少数株主が対立するのはなぜだろうか。ベイスターズがハマスタでの販売利権にメスを入れようとしたと考えるのが妥当だろう。

ハマスタ買収後最初のシーズンであった2016年、一番の変化は飲食のてこ入れであった。特に、ベイスターズブランドのビールは大ヒットした。



今回、ベイスターズは、この物販等の収入をさらに広げて、まるでビールメーカーのような事業をスタートさせ大きな売り上げを作ることに成功したのである。約4億の売り上げのうち利益は25パーセントから30パーセントだというから約1億円以上の儲けが出ることになる。



 昨年の球場の物販の売り上げで言えば、ビールは約8億円もの市場があった。しかも利益率が25から30パーセントと高い商品である。それでも、これまで場内で販売していた他社のビールと共存できるように、「シェアは、30から40パーセント程度に抑え、ビール全体のパイを押し上げたかったんです。まず一杯目にラガー、二杯目にエールと、ビールの杯数を増やしてもらいたいと考えました」と池田社長は言う。
 結果、昨年まで1試合で1人あたり2.2杯から2.3杯だったビールの消費量が、今季は2.6杯から2.8杯に跳ね上がった。ビール全体の売り上げも前年比で30パーセントアップ。球場で販売されている4社6ブランドの中でのビール占有率も、6月は32.4パーセントで、当初計画したマーケティング通りに運びビール事業は大成功した。

横浜DeNAが成功させた新球団経営戦略。ビールでチームを強くする?!,2016/8/30,THE PAGE




この数字はシーズン途中のものであるが、仮に通年でも同じ傾向だったとしよう。昨年約8億円のビール全体の売上が30%増ということは、2.4億円増である。販売部門全体の売上増加が2.41億円なので、この増加はほとんどビールといってもいい。

少数株主からすると、これだけビールが売れていて、つまりハマスタの主力商品が売れていて、営業利益が減るのだろうかという疑問や、従来ハマスタが総取りしていた販売利益がベイスターズブランドに浸食されているのではないかという疑念を抱くことだろう。

株主総会で横浜球場商事についてどんな議論があったのかは不明だが、異例の解散撤回の事実そのものが、この会社がハマスタの販売利権のど真ん中に位置することを示唆するように思える。



ベイスターズとハマスタの連結での業績の分析は、5月中旬にDeNAの決算が出るのでその時に行う予定である。



訂正:2017/5/17,2017/5/21



当初、訂正を別記事にしていましたが、事務局指摘により、元記事への追記に変更しました。

横浜球場商事の存続について、(株)横浜スタジアムの株主総会で波乱があったと書いたが、事実誤認があった。存続が決議されたのは、実際には横浜スタジアムではなく横浜球場商事の株主総会である。



(重要な後発事象)
 横浜球場商事株式会社については、平成29年4月10日開催の同社の株主総会において、会社の継続が決議されました。

株式会社 横浜スタジアム 有価証券報告書 第40期(平成28年2月1日-平成29年1月31日),2017/4/28,有報速報



「同社の株主総会」の同社が示すのは、横浜球場商事である。

読者の皆様にはご迷惑をおかけし大変申し訳ありません。

派生して、横浜スタジアムの少数株主と経営陣とが対立したという見立ては無意味になる。また、タイトルを当初の「ハマスタ2017年1月期決算、まさかの営業減益と株主総会での波乱」から、「ハマスタ2017年1月期決算、まさかの営業減益」に変更した。

誤解に気づくきっかけを与えてくださった横浜市公園緑地管理課さんに厚く御礼申し上げます。



加筆:2017/5/21



きっかけというのは、横浜市にハマスタの株主総会について情報開示請求をしたのだが、当方の書いた請求内容の株主総会の日付が異なっているので訂正してよいかと、公園緑地管理課より電話を頂いたことである。電話で同意したものの、有価証券報告書から取った日付がなぜ違うのか疑問は残った。改めて読み返して誤解に気付いた次第である。特段目新しいものはない旨すでに電話で回答を得たので記事にはならない予定だが、特別な報告書を作らなければならないような異例の事象がなかった証拠にはなるだろう。