大量投票≠組織票
オールスターファン投票で不可解な結果が出ると、中身を吟味もせず、何でも「組織票」と呼びならわしてしまう傾向がある。しかし、現行の仕組みになった2008年以降の事例で、組織として統一した投票を呼び掛けるような動きは見られず、実態と呼び名が離れてしまっている。また、仮に組織からの呼びかけに応じて投票するにしても、それが当人の意思と矛盾しないならば、個人の自由な投票と何ら変わりない。
つまり、「組織票」だと批判することは、
1.組織なんてどこにもない!
2.組織票なんて国政選挙でもある。何が悪い!
という反論が来るのみで、実のある議論にはならない恐れが高い。
問題は大量投票
今、最優先な問題は大量投票である。1人が万の単位で投票をして結果を左右する恐れが十分に存在する。当人がどう考えようと、この行為に正当性はない。マークシートの記入に多くの時間を費やすことは、意見が一万倍尊重されるにふさわしい野球界への貢献でも何でもないからだ。
大量投票の温床は各球場の投票用紙と見て間違いない。投票場所に段ボール箱入りで無造作に置かれ、係員が張り付いているわけでもない。2013年には、箱ごと投票用紙を回収するのが最も効率がいいと大量投票の当事者がSNSで告白した。
答えは明らかだが…
このシンプルな問題を改善する方法が思い浮かばない人のほうが珍しい。係員を配置する、入場時に1人1枚ずつ手渡しする、王貞治氏が提案したチケットと投票権をリンクするAKB総選挙方式など効果的な方法がいくらでもある。
にもかかわらず、2016年まで対策が取られていないのが現実である。内情は察するしかないが、
1.費用をかけたくない
2.投票数がスポンサー料の根拠になっているために、見せかけだろうが数を減らしたくない
こんなところではないか。ならば、なるべく費用や手間のかからない、投票全体を増やす方向で努力するしかない。
得票数のリーグ上位選出へ変更を
一番簡単なのは、ポジションで分けず、各リーグでの得票数の上位を選ぶことだ。そもそも、同部門に複数の人気選手がいるときに一人しか選ばれないというのはもったいない。山田哲人と菊池涼介、両方選ぶのが自然だろう。
得票が少ない部門はファン投票選出されなくなるが、他の選出方法で補充できる。票が多数の候補に分散する先発投手には不利だが、登板間隔の調整などを強いられる球団側はむしろ歓迎するかもしれない。
これだけで大量投票の影響を受けにくくなる。現行方式なら大量投票のあおりで惜敗した有力選手が当選することが可能になり、大量投票を受けた選手が有力選手不在の部門で1位になっても、得票数でリーグ上位に入らない限り当選しない。
試しに2013年のセ・リーグ投票結果にこの方式を適用すると、宮本慎也と岩瀬仁紀が外れ、代りに坂本勇人とマット・マートンが当選する。この年一説約63,000票という大量投票が宮本の当選に影響したと見られるが、それを回避できる。
これはすぐに実現可能だが効果も限定されるので、中長期的には近年減少傾向の投票者を増やす取り組みが必要である。
ネット投票を増やす
参考になるのはMLBで、球場演出から投票に誘導したり、SNSでキャンペーンをするなどして、ネットの投票が増え、とうとうネット投票の冠スポンサーを獲得した関係で、投票用紙を全廃した。登録の身元確認が甘く、不正投票がかなり出た模様だが、それでも、紙よりは不正がしにくいネット投票に幅広いファンを呼び込む戦略は、日本でこそ必要だ。
投票数増加やそれに伴うスポンサー獲得などで余裕ができたら、仕上げとして大量投票の元を断つ投票用紙の管理強化などに取り組めばよい。
まとめ
例えNPB事務局が非力な組織だとしても、投票数減少を恐れて大量投票を放置すべきではない。得票数のリーグ上位選出に選出方法を変えるだけでも大量投票の影響の緩和が可能である。また、投票数を増やすことで大量投票の影響を薄める努力は、リターンが見込める投資であり、ためらう理由はない。このまま放置すると、数年ごとに大量投票疑惑が勃発し、オールスターのブランドを毀損することになる。
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