赤字が当たり前といわれるプロ野球界にあって、じつに42年連続(1975年~)で黒字をたたき出している

日比野恭三,カープの勝敗と商売をめぐるファンとの駆け引き,2017/1/30,VICTORY


カープが長年黒字を続けているのなら、配当は実施しているのだろうか。そして、金額はいかほどなのだろう。補強をケチって松田家でおいしい思いをしていたりということは本当にないのだろうか。直接公表はしていないが、実は簡単に分かる。



カープの決算公告を時系列で追っていくと、当期純利益ほど純資産が増えていない。この差額は株主への配当金である。ただし、2006年5月の会社法施行以前は役員賞与の可能性もあるが、今回扱う資料は該当しない。


広島配当


また、「東商信用録 中国版」に、カープが1株あたり40円の配当をしていたという記載もある。このままでは比較できないので、1株の額面を調べる。



「帝国データバンク会社年鑑 第96版(2016)」によれば、マツダの持ち株数は221,616株である。保有比率は34.2%(32.7%という説もあり)、資本金が3億2400万円ということは、

3.24億円×34.2%/221,616株=500円

これが1株の額面である。



決算公告は百万円単位で丸めているため、1株あたり配当を計算すると端数が出るが、5円刻みで配当を増減させていることは容易に想像できる。近年は60円配当を続けているようだ。



残念ながら東商信用録と当記事の計算結果を比べると差異があり、当記事の数字が東商信用録よりも常に大きい。なので、配当以外に純資産を目減りさせるものを私が見落としているのかも知れない。しかし、少なくともこの計算を上回る配当はお金の出所がないのは明らかである。



この配当が高いか低いかは見る人次第ではあるが、私見を述べたい。



カープは同族経営ゆえ松田家の望みどおりに配当を決めることができる。決算公告が入手できた期間では2007年に純資産を減らす配当を行っている。この頃はこれ以上の内部留保は必要ないと考えていたのか、株主の資金繰りが厳しかった可能性が考えられる。しかし、マツダスタジアム開場後は、利益は1~2桁増えたが、配当は極小時の3倍、約3900万円で頭打ちとなっている。毎年そこそこの配当はとるものの、カープにもしっかりと儲けを残している。まずは家業であるカープの事業の継続と発展を望んでいるといったところではなかろうか。



そこそこの配当は、相続税対策で現金を準備しておく必要があることも一因であろう。カープの事業規模が急拡大した今日、その株式の相続には多額の税を払うことになる。相続時に現金が足りなくてもカープ株は自由に売れない。他の株主、要するに身内とマツダが株を引き受けるか、それが無理なら、カープそのものが増配や自社株買いで救済することになる。



相続という私事でカープの資金繰りを悪化させるのは憚られると感ずれば、株主側でリスクに備える必要がある。カープが儲かるほど相続リスクは拡大するわけで、それに見合う現金はカープから得たいという考えに至るだろう。どのみちカープが大元の資金源ならば、カープとしては、相続で突発的に振り回されるより、毎年一定額を配当した方が経営はしやすい。



年間約3900万円といえば、松山竜平の今季年俸4000万にも匹敵する安くはない金額だが、カープの経営安定のためには松田家の財政安定も重要であり、必要経費とみなしてもよいと思う。もちろん松田家がカープを持ち続ける必然性はないが、現状うまくやっている。当面はそこをいじらない方が無難だろう。



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