すき間ベイスターズ

他の人が拾わないすき間ネタを求めていった結果、経済系プロ野球ブログの色が濃くなっています。 スポーツナビ+から引っ越して来ました。

2016/09

BAYビアガーデンそばのワゴンで須田のタオルを買った。番長グッズはそこでは当然手に入らない。今日の試合にタオルは欠かせない。試合開始の頃はやや粒がはっきりした雨をしのぐために使っていたが、やがて降り方は弱まり、首に巻くことにする。

序盤から打ち合いになり、試合が進まない。三浦の試合というと抜群のコントロールで9時そこそこで終わるのが魅力だったが、今日はそんなことはどうでもいい。

一点のビハインドで5回裏2アウトで8番城、全員18を着けていてネクストが誰か見分けがつかない。5回裏終了後、ライト側ブルペン扉が開き、まさか交代かと焦るが、続投であった。

6回も集中打を浴びたが、もちろん交代はない。アウトを一つ取るたびに、終わりの近づきを感じて、顔を拭わずにはいられなかった。その辺りからは、三浦に対しては手をたたくのが精一杯で、声援を送ることはもうできなかった。

その後も、セレモニーの間も電車の中もほぼ涙ぐんで今に至っているが、なぜなのか考えてみた。

試合前、私の中では三浦が好投するイメージしかなかった。7月の試合で初回連打を食らったのも観ていたが、その後は粘りの投球を見せ、前回の阪神戦もたまたま援護がなかっただけで、衰えは感じなかった。権藤博氏もまだできるとコメントしたのだから、決してファンの贔屓目ではないと安心していた。なかば冗談ながら、引退試合ノーヒットノーランを夢見さえしていた。

しかし、実際に始まってみると厳しい現実を突き付けられた。ストレートはよく走っていたが、きわどく見える変化球がほとんどボール判定になり、追い込んでも簡単にファールされた。

「勝てなくなったから」と記者会見で語ったのは謙遜でも何でもなく、引退するのは若手に遠慮したからでもなく、番長が本心から悟ったのだと納得せざるを得ないヤクルトの猛攻であった。

それでも、どんなに打たれてもあきらめない、向かっていく姿勢は変わらなかった。三浦大輔は打たれようが、負けようが格好いい。私の想像とは大分違うものになったが、想像以上の引退試合をありがとう。

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BAYビアガーデンでシートを敷いて座っている人は初めて見た。

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記事の焦点が番長の粋な計らいという美談に向くのは仕方がないが、「球場をほぼ1周」はいただけない。

 引退試合は当然、「プレミアチケット」と化している。この日から29日ヤクルト戦のチケット販売が開始され、球場をほぼ1周するほどの長蛇の列となった。雨の中、チケットを求めて並んだ約3000人のファンを思いやり三浦が、粋な計らいを敢行。球場の放送設備を使い、自らサプライズメッセージを送った。

雨男のせい…DeNA三浦引退戦は29日にスライド,2016/9/23,日刊スポーツ



私が目撃したのは以下の図に示した行列である。人工台地上がどんな様子かは知らない。

番長行列


このチケットは雨天振替試合であったが、中止決定の直後の12時半ごろにハマスタでのみ発売が始まった。発売開始日時のニュースを待っていた私は、この抜き打ちに見事に出遅れた。

プレイガイドやベイチケと同時発売の通常進行でやると徹夜で並ぶ人が出るため、それを避けたかったのだろうが、14時ごろのスタッフは2、3時間待ちとしか言っておらず、軽い気持ちで並んで後に引けなくなった人もいたかも知れない。

私が並んだ後も列は伸び続け、15時で新たに列に並ぶことが禁止された。なかなか進まない列に並ぶ中、夕方サプライズメッセージが流れたが、先は長そうだった。

やがて、1塁側(Bay side)がもうすぐ売り切れる案内が始まり、20時50分に売り切れた。その後、3塁側(Star side)は全員が買える発表があり、安堵する。

連れがいる人、要領がいい人は、列を抜けてトイレや買い出しに行っていたが、律儀に抜けない人の方が多かったように見えた。

私がチケットを買えたのは23時過ぎだったが、後にまだ数時間分は列は続いていた。終電を諦めた方も多数いたものと思われる。


これと対照的だったのが、広島のクライマックスシリーズチケット販売である。

 午前11時から全国のコンビニ、各種プレイガイドで一斉に発売開始。県内のコンビニにはチケットを求めるカープ・ファンが列をつくった。しかし、「チケットぴあ」などインターネット購入は発売から10分程度で完売。一部のコンビニでは全国からアクセスが殺到し、発券システムがダウン。復旧後に即完売となった。

【広島】CSチケットのネット転売に球団が苦悩…発売15分で完売も即出品され30倍高騰,2016年/9/24,スポーツ報知


これはこれで並ぶ場所が変わっただけなのかも知れないが、まだましだと思う。

番長の引退試合だからそこまでバッシングにはなっていないが、今回学んだ教訓を、来るクライマックス、日本シリーズに活かしてほしい。
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『空気のつくり方』、著者は池田純横浜DeNAベイスターズ社長、9/11~9/17有隣堂ビジネス書ランキング1位の横浜で話題の本である。
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横浜DeNAベイスターズの5年間のグラウンド外での取り組みがよくまとめられていて重宝である。

驚異的な業績改善をなし遂げてきた著者だけあって、随所に成果の数字がちりばめられているが、気になる数字を見つけた。

二〇一〇年の時点で約五〇〇〇人だった会員数が、二〇一六年現在、なんと一五倍の七万五〇〇〇人を超えるまでに膨らみました。

空気のつくり方,31ページ,池田純,2016/8/30,幻冬舎


これまで、ベイスターズはファンクラブ会員数の伸び率しか発表して来なかったが、初めて実数を明らかにした。
7/31のweb受付締切前の数字のようだが、7月執筆ということなので大きく違うこともないだろう。

数字以上に気になったのは、発表のしかたである。去年までは盛大にプレスリリースしていた。

 DeNAが今季の事業総括を発表。集客面での躍進が際立つ結果となった。
《略》
 さらに球団公式ファンクラブの会員数も昨年の約1.5倍、DeNAベイスターズが誕生したここ4年間では約10倍に。

DeNA、大入り&チケット完売は球団最多 最下位も集客面で躍進際立つ,2015/10/9,Full-count


それが一転、著書の一文でふれるだけという地味な出し方をしてきた。

もう一点。先ほどの引用、「4年間では約10倍」、つまり、基準はDeNA参入直前の2011年である。今回は2010年、基準年をずらしている。お察しの通り、去年より会員数が減ったのでおおっぴらに言いたくないのだ。去年の約1/3以下になったと私は見ている。詳細は当ブログ記事「会員番号から探るファンクラブ会員数」を参照していただきたい。

会員数が減ることに驚きはない。当ブログ記事「限界の特典チケット 2015年度ファンクラブ」で述べたように、去年は会員数が多すぎて特典チケット制度が危機に瀕した。そのため、今年は制度変更をしたが、休日しか来られない人達にはかなり手痛い変更であった。

当然、池田社長も減ることを覚悟の上で変更を決断したはずだ。それでも受けとめ切れないところがあったのかなと、屈折した数字の出し方に感じる。

いつか、空気を壊さないようにこのことを発表してくれるものと期待している。
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中日ドラゴンズの復活のために一番必要なのは、観客動員を回復させることだが、組織上の問題がある。

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『ナゴヤドーム 8ゲート 19通路 29列 R321』
Photo by キット / クリエイティブ・コモンズ(表示 - 非営利 - 継承)

ナゴヤドームでの試合のチケットを見ると、

主催/中日新聞社 中日ドラゴンズ

と書いてある。意味するところは、チケット販売で親会社の関与が深いということだ。名前の順からすると、むしろ親会社に主導権があるのかも知れない。新聞の拡販とからめて招待券を撒く際に都合がよいことは理解できる。

ただし、弊害もある。現場と観客の間が離れてしまう。チケットを親会社で買い上げていたら、現場の創意工夫が自分たちの成果として返って来ない。

同じことがシーズンシートにも言える。開幕前に売上が確定することは経営安定上魅力だが、売った席が空席でも構わないという無責任を助長しかねない。

中日ドラゴンズはシーズンシートの席数を来場に関わらず観客動員に含めて発表し続けている。近年では、見た目で実感する数と発表にかなりの開きがある。当然、現場のスタッフはそこにトップの手抜きを見透かす。

ドラゴンズの経営不振に様々な外部環境の変化があるのはもちろんだが、行き着くところは、観客動員の集計に象徴される、かつての恵まれた時代からの変化を直視して来なかったことが最大の原因である。

本来ドラゴンズは中京圏という日本有数の大都市圏を独占できる有利な立場にある。観客数発表に違和感を感じるということは、いまだ他球団が羨むくらいのシーズンシート契約数がある裏返しである。そして、十分黒字が可能な客席数のあるナゴヤドームもある。さらに、不完全といえども、そもそもナゴヤドームとドラゴンズは赤の他人ではない。

これだけの潜在能力を眠らせているのだから、どう呼び覚ますかだけの話である。改革の進め方は様々あるだろうし、すでに始めているだろうが、まず手を着けるべきは観客の実数を数えることではないか。ドラゴンズが恐竜となるか昇竜となるかの分岐点はそこにある。
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近年赤字体質と言われる(株)中日ドラゴンズと、そこから使用料を受け取る(株)ナゴヤドーム。両者の各年度の損益を示す。

中日損益

中日ドラゴンズは1997年のドーム開業後、2001年までは大幅な黒字だった。この時期は活発にFA選手を獲得している。

1994 金村 義明
1998 武田 一浩
2000 川崎 憲次郎
2001 谷繁 元信
2007 和田 一浩

また、2003年11月にはナゴヤ球場敷地に新選手寮・室内練習場を完成させており、資金面の充実を伺わせる。

しかし、2002年に申告所得を11億円も減らし、以降はおおむね赤字である。なお申告所得は税引き前利益とほぼ同義である。

球団が赤字でも親会社が補てんするし、節税にもなるから問題ないはずという見方もある。しかし、それを否定するのが愛知県による資料である。

中日財務

それによれば、(株)中日ドラゴンズは2006年から2011年の間に純資産を17億から2億まで減らしている。つまり、この間、球団単体で累積赤字である。中日グループが積極的に節税しているようには見えない。一切補てんしていないとは言わないが、少なくとも赤字をカバーし切れていない。

中日グループに余裕があればこのような決算にはしないだろう。中日新聞社の営業利益はたった43.6億円(2015年3月期)であり、ドラゴンズの赤字が年10億、20億と拡大したらかなりの重荷だ。中日新聞社にとって少々の赤字なら新聞の販促費だが、大幅な赤字は本末転倒である。

昭和の時代の国税庁通達を過剰に解釈して、プロ野球の球団の赤字は節税のため当然だという見方があるが、それはよほど余裕のあるオーナーに限った話である。節税で手元のお金は増えない。余裕がない会社は節約や投資が優先である。

親会社も余裕がない、球団も赤字と来ると、いよいよドラゴンズファンの鬱積はナゴヤドームに向かうわけである。何やら異様に高額な球場使用料を払っているらしいと。実際、ナゴヤドームはドラゴンズが赤字に転落した後もおおむね黒字を続けている。

確かに単純に両者を足せば赤字は減る。しかし、「ナゴヤドームと中日ドラゴンズの微妙な一体経営(4) 阪神より横浜に近い一体度」で示したように、(株)ナゴヤドームは、中日グループ外の株主が多くを占める関連会社に過ぎない。納税の観点からは別会社であり、恣意的な利益の付け替えは難しく、現状ではそれもままならない。例え何らかの方法で一体化したとしても、10億を超える赤字は吸収しきれない。

また、「ナゴヤドームと中日ドラゴンズの微妙な一体経営(5) 使用料40億円説の真偽」で述べた通り、近年の使用料は8億~17億円と推定され、他のドーム球場と比較して法外とまでは言えない。球団赤字を一掃するほどの値下げ余地があるとは思えない。

以上が、中日ドラゴンズ関連の3社の一体経営の概要である。チーム低迷の要因でありながら深い闇に包まれ、それこそ黒幕が潜んでいるのではとささやかれて来たが、照らしてみれば空っぽであった。

そもそも資本構成が完全な一体でない中で、常識的な取引をして、結果赤字になったが、親会社もすべて補てんするほど余裕はない。

もちろん赤字の主因である観客の減少に関して、当事者に至らぬ点があったことは否定しない。その意味では中日グループは悪者かもしれないが、特段ドラゴンズから搾取した訳でもない。

ただ、倒すべき黒幕がいないからといって、ドラゴンズファンががっかりする必要もない。ドラゴンズの潜在能力が高いことは冒頭の表でも証明されている。ドーム開業後数年は両者とも大幅な黒字だった。やるべきことは明らかだ。

次回は、中日ドラゴンズ復活のための次の一手は何か考えてみたい。
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