すき間ベイスターズ

他の人が拾わないすき間ネタを求めていった結果、経済系プロ野球ブログの色が濃くなっています。 スポーツナビ+から引っ越して来ました。

2016/08

まず、新たな資料に以前の結論と合わないところが出てきたため、訂正をしたい。
今回入手したのは、日本経済新聞社の手によるデータである。1990年から2003年と2012年、2013年の12月の(株)ナゴヤドームの主要株主の記載があった。2000年から2003年は筆頭株主しか記載がないなど、連続したデータは入手できていないが、ナゴヤドームの着工前から直近まで、主要株主の顔ぶれや保有比率はほぼ変わっていないようである。


           株数    比率

中日新聞社      2,250,000 11.8%
トヨタ自動車     1,800,000  9.4%
中部日本ビルディング 1,320,000  6.9%
中日ドラゴンズ    1,200,000  6.3%
名古屋鉄道      1,200,000  6.3%
中部日本放送     1,080,000  5.6%
東海テレビ放送    1,080,000  5.6%

中日グループ3社計  4,770,000 24.9%

発行済み       19,140,000 100.0%

※2013年12月時点、日経会社プロフィルを基に加筆


残念なことに前回までの記事と食い違う点が多い。このデータは三重テレビ放送が筆頭株主という話とは両立しない。以前の記事で説明した通り、三重テレビの投資目的有価証券保有額が、5億円ほどしかないので、2013年12月以降に主要株主すべてが保有を減らさない限り不可能だが、現実的でない。

なので、せっかく調べていただいたししゃも様には申し訳ないが、前々回の結論の三重テレビ筆頭株主説は撤回する。

しかしながら、日本経済新聞の調査も、東海テレビと東海ラジオの保有分に関して疑問が残る。資料に記載のある年のすべてで、東海テレビの保有比率は変化がないが、そうすると、有価証券報告書の記載によれば、2007年から2008年に一時的に株をよそへ預けたことになり、やや不自然である。

すっきりしないが、ひとまず日経の調査を大枠として受け入れて話を進める。

主要株主のうち、中日ドラゴンズと中部日本ビルディングは中日新聞社の100%子会社である。3社の持分を合計すると24.9%となり、他の株主からは頭ひとつ抜ける。放送各社など関連会社も含めれば、より大きな影響力はあるだろう。

とはいっても、株に絞った話でいえば、ドラゴンズとナゴヤドームの一体度はベイスターズと横浜スタジアムのそれより薄い。ベイスターズはハマスタ株の約3/4を保有している。

つまり、ドラゴンズとナゴヤドームは、横浜以上の制約を受ける。以前「巷でいうほどハマスタ買収は儲からない」で指摘したように、(株)ナゴヤドームも、中日グループ外の株主を無視した経営はできないし、利益を自由に付け替えることもできない。さらに株主はトヨタ自動車など大物揃いである。

だいぶ遠回りになってしまったが、中日ドラゴンズとナゴヤドームの一体経営は、阪神やオリックスのようなグループ内完結でなく、むしろ横浜に近い制約のある形であることをご理解いただきたい。続きを読む
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前回記事で中日新聞社は(株)ナゴヤドームの筆頭株主でないという一見非常識な結論を出し、信じがたいというコメントもいただいた。そこで、なぜそうなったのか歴史をひもといていきたい。

ところで、グループの中核的存在のナゴヤドームに中日の名を冠さないのはなぜだろうか。日本に数個しかないステータスシンボルである。ドナルド・トランプより奥ゆかしいからだけなのだろうか。

実は中日ドームになるチャンスは、ドーム構想が生まれるはるか昔につぶれていた。

ドラゴンズのかつての本拠地、ナゴヤ球場はもともと中日スタヂアムと呼ばれていた。運営会社の(株)中日スタヂアムは、上場して保有比率は低いものの中日新聞社が筆頭株主で、社長も中日出身だった。この会社は多角化に失敗して1973年に倒産し、最終的に名古屋の有力企業が共同出資した新会社が球場を運営することになる。これが(株)ナゴヤ球場である。

上場して巣立ったとはいえ、中日新聞社は系列会社をいわば見捨てた形であり、ましてや、五摂家と呼ばれた中部財界の重鎮が株主に名を連ねる新会社で大きな顔はできないのは必然である。

その後、三菱重工業など数社を新株主に加えた上で全株主が増資し、(株)ナゴヤ球場がドームを建設・運営することになる。増資の記事には中日新聞社の影も形もなく、前回の私の推測とは反対に、中部財界主導で進んだように見える。

もしも、(株)中日スタヂアムが経営に行き詰まらなければ、1990年代までに自己資本を充実させ、単独で中日ドームを建設することは充分可能だったろう。しかし、現実にはナゴヤドームが建って、謎に包まれた「一体経営」を行っている。次回はようやく一体経営のお金の流れを検証する。続きを読む
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注(2017/12/29 追記):


新たな資料の発見で、本記事の内容は否定されている。詳細は、
ナゴヤドームと中日ドラゴンズの微妙な一体経営(4) 阪神より横浜に近い一体度
を見ていただきたい。


前回記事のコメントを基に調査と検討を加えた結果、(株)ナゴヤドームの資本構成がおぼろげながら見えてきた。どうやら、中日新聞社の持分は5%にも満たないようだ。

(株)ナゴヤドーム
   株主:   
      三重テレビ放送(3.9?~5.4%) ※筆頭株主
      中部日本放送(5.6%?) ※テレビとラジオに持分を分割?
      東海テレビ放送(3.9%)
      東海ラジオ放送(1.9%)
      中日新聞社(取締役派遣、<3.9%?)
      中部電力(取締役派遣)

   その他、株主の可能性があるもの: ※(株)ナゴヤ球場設立(1975)時の出資者
      三菱東京UFJ銀行    
      東邦ガス
      名古屋鉄道
      大丸松坂屋百貨店
      トヨタ自動車

三重テレビ放送の2016年3月期貸借対照表によれば、投資有価証券が514,080,817円、この中にナゴヤドーム株が含まれていることになる。しかし、そうすると、中部日本放送の持分5.4億円を下回り、矛盾を生ずる。

ヒントは東海テレビ放送と東海ラジオ放送の有価証券報告書にあった。三重テレビ放送がナゴヤドームの株主なら、当然他の放送各社も調べる必要がある。結果、東海テレビ放送が3.6億円(2007年3月期)、東海ラジオ放送が1.8億円(2007年3月期)の株を保有していたことがわかった。両者を足すと5.4億円と中部日本放送の持分と一致するのは偶然だろうか。さらに、中部日本放送の株保有が最後に記載された2013年3月期決算の直後、4月にCBCラジオが分社化されたことは何か関係しないだろうか。

あくまで推測だが、東海テレビ・東海ラジオと横並びになるように株の名義を分けたのではなかろうか。こうすれば先ほどの矛盾は解消できる。そして、横並びということなら、三重テレビの持分も他のテレビ局と大差ないのが自然だろう。

なお、中日新聞社の資本が入っているテレビ愛知の有価証券報告書に保有の記載はなかった。ドーム開業当初放映権がなかったことも関係しているのだろうか。

以上、中日新聞社の持分はわずか3.9%未満という驚愕の結論が導き出された。ちなみに、(株)横浜スタジアムを子会社化する前の(株)横浜DeNAベイスターズのハマスタ株持分は5.74%であった。(株)ナゴヤドームというのは、リーダーと呼べるほどの企業は不在の、非常に横並びの資本構成をしている。

そんな中で中日新聞グループが圧倒的な主導権を握っているのは、ドラゴンズのブランド力をフル活用した結果といえるだろう。裏を返せば、自己資金に乏しかった中日新聞グループが巨額の建設費を調達するためには、ドラゴンズを使うしかなかった。放映権を餌に放送局を巻き込み、オール名古屋で大阪に負けないものをと体面を重んずる名古屋財界を焚きつけた。あるいは、中日さんが無理なら代りにウチがやりますよと名乗りを上げる企業もなかった。これらは推測に過ぎないが、的外れでもなかろう。

結局、経営一体化とは株よりも人なのかもしれないが、3.9%未満ではさすがに他の株主を無視できないのではと感じる。続きを読む
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谷繁監督の途中休養という衝撃に揺れる中日ドラゴンズ。その背景に経営面の厳しさがありそうだという指摘があったので調べてみることにした。

ドラゴンズでは近年、ベテランや主力選手が去ることはあってもそれに見合う補強はほとんど行われていないことに異論を挟む人はいないだろう。

週刊実話の記事などによれば、球団は落合監督時代から既に赤字で、近年では年間20億円ほどらしい。赤字の要因として、一説40億円とされるナゴヤドームの使用料を指摘する人もいる。しかし、トップが同一人物という、究極の一体経営にも見える(株)中日ドラゴンズと(株)ナゴヤドーム。横浜では黒字化の切り札であった一体化がなぜ名古屋ではそうならないのか。

ただ、ドラゴンズとその関連企業の数字というのは出典の不明なものも多く、その信頼性を検証しつつの分析となるので、脱線が増えることをご容赦いただきたい。


ドラゴンズは中日新聞社の100%子会社か?


今回調べて初めて知ったが、少なくとも2012年3月末時点まで愛知県が中日ドラゴンズ株7.5%を保有していた。次年度以降の県の財務書類附属明細書から消えたが、どこへ譲渡したかは分からない。未公開会社の株をドラゴンズ経営陣の許可のないところへ譲渡することは不可能だから、おそらく中日新聞社だろうとしか言えない。この様子では、他にも中日新聞社が秘密裏にドラゴンズ株を一部他者に譲渡していたとしても誰も気づかないのではとも思う。ただ、出典を明記した以下の記述は発見した。

・中日ドラゴンズ:中日新聞92.5%、愛知県7.5%
市民球団は既存球団とどう違うのか?,市民球団を考える,2005年10月16日



ナゴヤドームは中日新聞社の連結子会社ではない


つぎに、(株)ナゴヤドームの資本構成が不明である。会社は元々ナゴヤ球場を運営していて、設立時に地元の有力企業が出資者に名を連ねている。

現 昭和50年秋、中日新聞、中部日本放送、東海銀行、中部電力、東邦瓦斯、名古屋鐵道、松坂屋、トヨタ自動車工業によりナゴヤ球場が設立。(※注、ナゴヤ球場とナゴヤドームとは別モノである)

「上場企業倒産銘柄集【昭和40年代後半(下)】(了)」掲示板 - 「『倒産』出没注意!喚起会」コミュニティー,みんなの株式 (みんかぶ),2009年08月19日


このうち、中部日本放送だけは数年前まで有価証券報告書に株の保有(5.6%)の記載があった。その後、記載する銘柄選定の基準が変わったため現在まで保有しているかは確認できない。

とはいえ、中日新聞社のサイトにも(株)ナゴヤドームはグループ企業と明記されており、また、オーナーはじめ取締役の多くが中日新聞社の出身であり、強い影響下にあるのは明らかである。

ところで総務省は、マスメディア集中排除原則に基づき、10%を超える放送事業者の議決権を有する者、つまり通常は株主を公表している。

放送事業者名   | 1/10を超える議決権を有する者の氏名又は名称 | 議決権の総数に対する議決権の比率(%)
        
三重テレビ放送(株) | (株)ナゴヤドーム             | 32.8
地上系放送事業者,総務省 電波利用ホームページ


このこと自体は割と知られているのだが、注目すべきは以下の注記である。

(注) 基幹放送事業者の議決権を直接有する者に対して100分の50を超えて議決権を有する者(親会社)が
   ある場合には、親会社が当該議決権を有しているとみなして親会社名を記載しています。

地上系放送事業者,総務省 電波利用ホームページ


つまり、(株)ナゴヤドームの代りに(株)中日新聞社と記載する必要はない、なぜなら過半数を握っていないからということになる。

この実際の影響力と資本面のねじれ、些細なことかも知れないが、中日ドラゴンズを財務面から分析するには欠かせない情報である。グループ企業のひとことで済ませられない問題が潜んでいるかも知れない。続きを読む
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